キモノに新たな価値を。新たな装いへ。
2022/1/21:京東都ギャラリーにて〈UZ Fabric〉初の展覧会を開催します

何より魅せられたのはテキスタイルとしての美しさだからカタチは何でもいいんです

古い時代のキモノとの出会いで初めて気づいた現代にはないモダンなデザインの魅力

■まず、小寺沢さんとキモノとの出会いはいつ頃、どんなきかっけがあったんでしょう?

小寺沢「そもそもは〈キモサト〉です。私自身、普段から着物を着る人ではなかったんですね。実際、成人式以来、着物なんて兄弟の結婚式くらいしか着ていなくて。
〈キモサト〉の主催者が〈竹の輪〉っていうイベントをやっていたんですね。“和に遊ぶ”というコンセプトで。歌舞伎をみんなで観に行ったり、落語を聞きに行ったりとか。夏だったら『歌舞伎を観に行くなら浴衣を着て行こうか』とか、そういう感じで。
そこから着物を買いに行くようになったり、着付けを教えてもらうようになったり。それが和の文化と触れ合うようになった最初のきっかけ。で、その主催者が“着物の里親探し”を始めるということになって。」


■それが〈キモサト〉ですね。

「会社(UZ株式会社)として竹ノ輪をサポートしていたので、『いい活動だね』っていう話になって。〈キモサト〉をお手伝いすることで、本格的に着物に触れることになったんです。

〈キモサト〉には本当に色々な古い着物が並んでるわけですけど、どれもデザインがすごく素敵で。それまで私自身、それほど多くの着物を見たことがなかったし、見たとしても呉服売り場にある新品のものばかりだったから、古い時代の着物の良さに驚いて。時代によってトレンドが全然違うんですよ。すごくモダンな柄、素敵な柄がたくさんある。それを初めて知ったんですね。

現代だと、着物を着るシーンって、おそらくお茶会だとか、結婚式とか、日常から少し離れたシチュエーションだと思うんですね。でも、こんなに素敵なんだ、モダンなんだっていう事を知ったときに、自分でも着たいな、と思って。私はジャニーズが大好きなので(笑)、着物着て〈滝沢歌舞伎〉観に行きたいな、とか」


■(笑)

「実際に〈キモサト〉で着物を買って、着て、みたいなことをやってみたんだけど……もう、これが面倒臭い(笑)。自分で着れないから、家まで着付け師さんに出張してもらって、着付けてもらって出掛けるしかない。

着慣れている人は『そんなの着るようになればわかるよ』とか『難しくないよ』って言うんだけど、日常的に着物を着るわけではないから。着付けを習いに行こう、というほどのモチベーションもないし。たまにしか着ないんだから、だったらお金を払って着付けしてもらおう、みたいな」


■確かに、着付けはハードルの高い問題ですね。

「素敵な着物がたくさんあるわけで、それを着てみたいとは思うんだけど、そのハードルをどうしても超えられなくて。


そして、〈キモサト〉では(着物の)里親さん探しを一生懸命しているわけだけど、どうしても余ってしまうものがある。里親が見つからない着物が出てくるんですね。サイズの問題であったり、シミや汚れの問題であったり。捨てられてしまう着物がある。でも、それってなんか勿体ないな、というのが《UZ Fabric》の原点かな。

シミや汚れがあるなら切っちゃえばいいじゃん、っていうか(笑)。サイズ小さいなら形を変えてしまえばいい、そういうところから始まったんですね。私自身は着物の織りや染めに興味があるわけではなく、テキスタイルとしての面白さや美しさに興味を持っていたので。だから、形は何でも良かった。その布地のデザイン、美しさが捨てられてしまうのは勿体ないな、と思ったので」


■だからこそ、ブランド名に“ファブリック”とあるんですね。

「そうそう。布のデザイン、柄。布地そのもの、というか。それがどんな形に変わっていくのかは、何でも良かったんですよね。別に服じゃなくてもよかった。着物を使って新しくリメイクしていく、生まれ変わらせてあげることが第一。捨てられてしまうのは勿体ない、違う形であっても残したい。残していけるのであれば、どんな形でもいいんです」


■服でなくても構わない、というのはちょっと意外でした。現在のUZ Fabricの代表作であるワンピースや羽織を見ると、そのデザインの完成度の高さから、てっきりファッション・ブランドとしてスタートしたものだと思っていたので。

「それは着物を何に形を変えるか、と考えていく中で生まれただけというか。とは言え、着物ってもともと着るものなので、『着付けは出来ないけど、身につけられるものって何かな』っていう発想の中から、ワンピースが最初に出てきたアイデアですね」


造形であれ形であれ、洗練されたものが好きなんです。
常にレベルの高いものを求めていたい


■小寺沢さん自身、ファッションにはこだわりを持ってらっしゃいますよね。こだわりというか、自分自身が好きなテイストをしっかりと理解されている。

「《UZ Fabric》で扱うものは、自分がいいと思うかどうかというのは絶対に譲れないところ。譲れないというか――格好いいものが欲しいんですよ、私は。ファッションっていろんな形、いろんなものがあるんだけど、私の中では“かっこいいもの”が好みなので、どのアイテムもそういうものにしたい。リメイクもの、特に着物のリメイクものというのは世の中に、ものすごくたくさんあるんですね」


■そうですね。

「あるんですけど、私自身がイメージするキモノの良さ、というものとは少し違っていて。元々のキモノのデザインであったり、素敵なテキスタイルをそのまま活かしたプロダクトを作りたかった。だから、“リメイク”という言葉ではなく“アップサイクル”という言葉を使っていたりもするんですが」


■とてもざっくりとした訊き方になってしまうんですが、小寺沢さんの感じる「かっこいい」の定義って、どう説明することができるでしょうか?

「うーん、どうだろうな……。本当に感覚的なものなので」

(金光/ブランド・ディレクター)「小寺沢さんは、本当に“美しいもの”が好きですよね。やっぱり美へのこだわりがすごい。それは近くにいてすごく感じます。美しいものに対してのアンテナを常に張っていて、常に『レベルの高い美しいものを見たい』という欲求がとても強い。造形が整っているもの、圧倒的レベルの高いもの。そういうものが好きというか、そういうものしか認めないというか。表現であれ、モノであれ」

「うん、まあそうだと思います。造詣や形とか、いろんなものに対して洗練されたものとか、美しいものは好きだと思います。」


それぞれのキモノとの出会いは一期一会。
今、この瞬間にキャッチしておかないと、もう二度と出会えない。その感覚の方が、エシカルやサスティナブルといったことよりも先にある


2021年現在、エシカルなもの作りというのは、とても注目されていますよね。社会的にもトレンドなキーワードと言えます。社会的貢献、倫理的なモノづくりというのは、《UZ Fabric》のコンセプトとまさに重なるわけですが、それは最初から意識されていたんでしょうか?

「それは、全然なくって。後からそうなっただけ、というか。シンプルに『着物を捨てるのは勿体ない』という――。何ていうのかな、昔に作られたものは、もう今は作れないわけですよね。だから着物との出会いというのは一期一会なものなんです。それを今、この瞬間にキャッチしておかないと。別の形、次の形に変えてもいいし、そのまま着てもいいし、どんな形でも構わないんだけど、今、救い上げておかないと次の出会いはないんですよ。だから、それを身に着けたいとか、持っておきたいと感じたのであれば、形を変えた方がいいのかな、というくらいの感覚であって。なので、ブランドを立ち上げてみたら結果、エシカルであるとか、そういった世の中的な時流に乗っていた、というだけの話。

ブランドのコンセプトを決める時も、例えばサスティナブル的な『環境が~』とか『廃棄の~』みたいな問題を言った方が今っぽいし、トレンドだよね、と思うことはあったんですけど、あまりそういう社会貢献的な側面は強くしたくなくて。あくまでもブランドとしてやっていることが、結果、そういったところに繋がっているだけであって。そもそもブランドのモチベーションとしては、素敵な着物の古き良き魅力を使い繋ぐことなので。ちゃんと自分が身に着けたいと思うものを作ることだし、ちゃんとおしゃれで、かっこいいものに生まれ変わらせたい――それが一番重要」


■小寺沢さんが一番最初に、魅力を感じた着物、或いはデザイン/素材とはどんなものだったんでしょうか。どんな部分に具体的にときめいたのか、教えていただけますか。

「サイトのトップページに載っている生地。UZ Fabricのロゴがあって、その下にいる黄色と黒の生地。私はこれはもう、天才とだと思ってるんです。天才生地って呼んで大事に保管してる。実はこれって襦袢なんですよ。襦袢の袖の部分」


■つまり下着の部分ですね。

「そう、上に着ている着物の袖のところからチラリと見える部分のデザインなんです。本来は“見えない”もの。なのに、この色の合わせ、柄の合わせが衝撃的にかっこいいと思って。この子との出会いが本当に衝撃的で、『なんて粋でかっこいいやつなんだ!』みたいな。しかもこれを下着でやってるっていう。見えないところでやっている、という心意気もすごいと思った」


モノ作りの常識にとらわれないからこそ
生まれてくるプロダクトがある


■その出会いから、何かしらアイデアの発展であったり、モノづくりのアイデアが具体化していった、というような部分はあるんでしょうか?

「その出会いによって、というより、モノを作ろう、ということはもっと前から決めていたことななんです。」


■モノを作ることそのものに興味があった?

「何か……Webに飽きてたんですよね(笑)。今、私が本業でやっている(Webサイトのコンサルタントや制作)のは、あくまでも“人のもの”を作っているんですよね。お客様がいて、お客様が伝えたいことを表現するものとしてWebを作ったりしているわけです。20年間、たくさんのクライアントの方たち、メーカーの方たちとご一緒に仕事をしながら、モノづくりに対する姿勢や想いを、たくさんお聞きしてきたんですね。モノづくりに対する情熱や、そこに対する思い、どんな苦労があったのか――そういうお話を聞きながら、自分自身でモノを作って提供する、ということが羨ましいな、と感じていたと思います。

じゃあ、いざ始めようってなったときに、何をすればいいのかはまだ具体的にはわからないけれど、何かを作ってみたいな、と。本当にモノなんか作ったことがないから(笑)。だからまずは金光にお願いして、モノを作った経験のある人に来てもらうとか。とにかくもう本当に手探り。何にも分からない状態。『洋服ってどうやって作るの?』『そもそも、どういう人が作ってるの?』みたいな(笑)」


■しかも、着物のアップサイクルで、というシチュエーションは他にないわけですから、手探り、模索というよりも、むしろ開拓というか。

「そう、金光が一つひとつ、どうやって課題をクリアするのかを当たってくれて。本当に手探り。多分、普通のモノ作りだったら、もっと早く出来たんだろうと思うけど、何をするかもわかっていないから。着物を解かなきゃいけないし、洗わなきゃいけないし、とか。そういう一つひとつの工程を、何も知らないまま始めてるので。

それに多分、私の思いつくアイデアというのは、モノ作りをしてこなかった素人だからこそ生まれる変な発想なんですよ(笑)。『こういうことやれない?』とか気軽に言っちゃうんですね。だからちょっと変わったものになってるんだと思います。勿論、それを具現化してくれている金光はもう、本当に大変な思いをしてやってくれてるんだけど。いろんなところに相談しにいって、実験してもらって、っていう」


■ブランドの立ち上げから、最初のアイテムが出来上がってくるまで、どれくらいの期間がかかったんでしょうか?

「どれくらいだろう?半年以上はかかってるんじゃないかな、ワンピースのプロトタイプができるまでに。で、それをもとにブラッシュアップしていったので、最初の一点目が出来るまでに1年近くかかってると思う。少なくとも季節は3つくらい変わってたはず」


■一番難しい課題はどのあたりだったんでしょう?

「ワンピースの場合は、デザイン、形が気に入ったものになるまで、っていうのはあって。じゃあ、どこにお願いして作ってもらうのか、というところから。最初はパタンナーさんにパターンをあげてもらって、型紙を作って。そこから実際にサンプルを作って、着てみて。ここは違うとか、もう少しここを変えてとかって改良を続けたんですよね。なので、本当に手探りだった。

ただ、ワンピースの場合は着物を解体していないので。素材(となる着物を)一本渡して、それを『こんな感じで』ってお願いをして、ワンピースのパーツを取ってもらっている。だから、比較的手順が少ないんですよね。他の商品よりも。なので、パッチワークのストールあたりから、なかなか色々と困難なことが出てきた感じかな」


■ブランド・コンセプトである「使い切る」というポイントに近づくほど、やはり難易度が上がってくる、ということですね。

「そうですね。あとは、モノの形。要は、パッチワークというのは色んなものを組み合わせているから。最初に“着物をほどく”ところから始めなくちゃいけない。まあ、そこからして手間なわけです(笑)。自分たちでほどいてみたんだけど、着物1枚をほどくのに一晩かかりましたからね。着物をほどく、つまり反物に戻すっていうのはそれくらい大変。そうやって解体をして、そこから組み合わせを考えて、商品を組んでいく。

で、その後に、さらに古着だから洗わなきゃいけない、という。その洗いも、着物の段階から洗うのがいいのか、製品になってから洗うのがいいのか、といったことも何度も検討して。うん、洗いの問題が、金光が一番時間をかけて検討してくれたと思います」


最後までキモノを活かす、生まれ変わらせる。
ブランドの新プロジェクト〈H-series


■例えば一番新しい〈H series〉であったりといったアイデアも、そういった作業の繰り返し、課題をクリアしていく中で、新たに生まれてきた、という部分もあるんでしょうか。

「何かを作るほど、どうしても端切れはたくさん出てきてしまう。小さな汚れやシミだったり、ほつれがあることで使えない、というパーツがどんどん貯まっていくんですね。でも、これを捨てるのは勿体ないよね、って。どうにか出来ないのかと考えて、スタートしたのが〈H series〉」


■ハギレ=H、というとですね。ただ、ハギレって、生産過程の中でそれほどに大量に出るものなんですか?

「ものすごく出る。例えば、ストールとかに使える巾っていうが30cmだとすると、20cmくらいの使わなかったハギレがたくさん出てくるの。中途半端だったり、長さや幅が足りなかったりで、使い道がないわけ。ものすごい長さはあるけど、どうにも使えない、とか。でも、これを活かさないわけにはいかないわけで」


■〈H-series〉の一作目はラグになるわけですが、ファッション/アパレルのアイテムではなく、インテリアに向かったというのも、非常に興味深いです。

「こういうハギレを使った、わしゃわしゃっとしたラグというのは、元々モロッコにあるんですね。〈ボ・シャルウィット〉って呼ばれるラグなんですけど、モロッコに旅行に行ったときに、とても素敵だなと思って買っていたんですね。モロッコには絨毯、手編みの美しい絨毯を作る産業があるんですけど、その中でも〈ボ・シャルウィット〉はハギレを使ってるんですよ。リサイクル・ラグなんですね。カーテンだとか、お洋服だとか、そういう不要になったものを切り刻んでラグにする、というもので。だから、どちらかというとお土産用ではなく、現地の、家庭用のものなんです。高価な特産品として海外に輸出するものではないんですね、多分。ただ、私がたまたま泊まったモロッコのホテルで〈ボ・シャルウィット〉がたくさんひいてあって、それがすごく素敵で。もう、本当にアートなんですよ。柄も一つひとつ違って。決まったパターンも中にはあるんだけど、手編みをする人たちのセンスで個性が生まれていて。それがすごく気に入ったんです。で、その時のガイドさんに『このカーペットが欲しいんだけど、どこに行ったら買えるの?』って(笑)。そうしたら、これは高級カーペット屋さんやラグ屋さんでは、これは置いていなんだ、と。それでも欲しいっていうことで、工場まで行って買ってきたんです。で、ハギレを使っていて、私が好きなものは何か、と考えたときにその〈ボ・シャルウィット〉が私の家あった。じゃあ、これをキモノで作ったらどうなるのか?というところから始まった、ということですね」


■なるほど。

「それが本当、最初の出発点。作り手の方のセンスであったり、アート作品にも見えるような作品にキモノが生まれ変わったらいいな、と思って。異文化との交流という意味でも素敵じゃないですか。どんなものが生まれてくるんだろう?っていう興味もあって。ただ、いざやってみようと思うとモロッコは遠いし、ルートもなくて。じゃあ、どうしようかって調べていったら、インドのルートが見つかって。インドでもこちらから指示を出せば作れる、っていうことになって。モロッコのデザインというのは、やっぱりモロッコ独自のものだからインドでは再現不可能なんですよね。やっぱり、専門のアーティストの方々が作っているわけだから。でも、私たちである程度のデザインを作ることができば、近いものは作れるかもしれない。ということで、手元にある大量のハギレや、汚れや染みがあることでそもそも解体すらしていなかったキモノだとか、そういう素材をインドに送ったんです。で、そのインドの工場の人たちが素材を刻んだり、選んだりして、一枚のラグにまとめてもらう、っていうことを試してみたんです。要は何を期待していたかと言うと、やっぱり海外の色合わせって独特なんですよね。日本人の感覚での色合わせとは違う。それってどうしても、日本でやっても出せないな、と思ったので。それを見てみたいと思って、海外におまかせで依頼してみたんです。こちらからの指示は、ある程度のパターンと、円形で、ということくらいで。色合わせは完全におまかせ。好きにしてくださいって。だからこそ斬新な、ちょっと変わったものが仕上がってきてるんですね」

■これまでのプロダクトとは違い、自分達とはまた別の視点、感覚を取り入れたということですね。

「〈H-series〉はチャレンジな部分が多いシリーズではありますね。ハギレという小さなものを使って何が作れるのかということがメインのテーマなので、アパレルの方のちょっとクールなイメージとはまた違う、楽しいもの、わくわくするものを作りたいかな、と思ってますね。カジュアルな感じで、新しいもの」

■第2弾にあたるルームシューズも、バブーシュを思わせる異文化的なテイストがありますね。

「そう、これも元々のイメージはバブーシュだったんだけど、サンプルを作ってみたらダサくって(笑)。で、改良に改良を重ねるうちに、オリジナルなものが出来上がってきたという感じ。だから、本当に、実際に作ってる方たちには迷惑なブランドだと思いますよ(笑)。元々モノ作りをしていない素人だからこそ言えてしまう図々しさというか、発想と言うか。詳しい知識を持っている人なら絶対にしないであろうお願いを平気でする、という。それに付き合って下さる方がいることは、本当に感謝ですよね。そういう無茶を面白がって下ささる方がいて、一緒に、今までにない、ちょっと変わった何かを作っていくっていうことがすごく楽しい」


“コロナ以降”のライフスタイルを想像したとき見るだけで元気になるような商品を作りたいと思った


■現在のHPには新たに「Something Old Something New」という新しいキャッチコピーとともに、これまでとは一味違うブランドイメージも公開されました。これまでのクールさとは違う、楽しさを、と思うようになったきっかけは何だったんでしょうか?

「それは、やっぱりコロナ。色々なものが制限されて、気持ちとしても鬱々とするじゃない? それが1年以上も続いて……。クールな感じもいいんだけど、そうやって落ち着き過ぎているものしんどい感じがして。今の気分じゃないな、って。今年もまだコロナは続くけど、ちょっと新しい、気分を明るくできるようなアイテムを作ったり、何かを企画できればいいなと思って。そこでイメージを変えてみたんですよね。やっぱりみんなおうち時間が増えてるから家で使えるものを作ってみよう、とか。おめかしして出かける機会がなくなって、ストールやワンピースなんかの出番も減ってますよね。じゃあ、今の、新しいライフスタイルの中でちょっと気持ちが明るくなるものとか、目で見て楽しめるものとか、そういうことができるものを作りたいな、と思って。これは私だけじゃなくて、世の中の気分だと思うけど。だから、これまでよりもポップなものというか、身近でちょっとだけ明るいもの、ちょっとしたところで元気がでるもの、というか。色味も明るめで、マルチカラーっぽいものを作ってみたりとか」

色柄の組み合わせにも変化があった、ということですね。

「色合いがポップなものが増えてますね。目から元気になりそうなものですね」


キモノに詳しくなくても、ルールを知らなくても構わない
「なんだか分からないけど素敵だな」と感じてもらいたい


■制作の過程の中でのアイデアの発展、といったこととは別に、実際に購入して頂いたお客様からの反応や、ポップアップショップを実施することでの発見や気づきといったものはありましたか。

「まずあったのは、自分たちが最初に想定していた層ではない方たち――より年上の方たちが興味を持ってくださるんだな、ということ。やっぱり着物と触れ合いのあった方たちほど、いいなと感じていただけるんだな、と。

最初は私ぐらいの年代、40代くらいを想定していたんですね。若干金額が高めのものであっても、面白いものだったり、個性的なもの、他の人とは違うものであれば身に着けたい、買ってもいいなと考えるような層をイメージして作っていたんです。実際のところ――勿論、そういう層のお客様もいらっしゃるんですけど――自分達が着物を着ていた世代の方々、お母さん世代やもう少し上の世代の方々がとても興味を示してくださって。

なるほど、そうなのか、と。上の年齢層の方たちは、ご自身で着物を持ってらっしゃると思うし、着たこともある。でも、今はもう着れない、ということなんじゃないかな。色々な理由があると思うんですけど。体型が変わったからとか、着る手間が面倒とか。でも、着物を身に着けたいという思いを持ち続けていらっしゃる方は、とても多いんだな、ということはとても感じましたね」


■実際に70代後半の私の母ともポップアップショップにおうかがいしたことがあるんですが、母が本当に楽しそうなんですね。いろいろな生地を見たり、触れたりすることで、記憶が蘇るというか。自分もこの柄は持っていたとか、これは当時流行っていたんだ、とか。一つひとつのプロダクトの持つ歴史を読みとれるんだな、ということに、私も驚かされました。

「私たちは着物の専門家ではないので、着物の歴史やデザインの歴史を説いていこう、という気はあまりないんです。例えば、私が好んで選ぶ着物というのは、おそらく昭和初期もの――アンティークに近いんだけれども、現代的でもあるっていうくらいの時期のものなんですね。多分。やっぱり流行的なものがあって、私は、その時代のあたりの着物を選びがちな傾向がある。その頃の匂いというか、デザインを失わないまま未来繋げよう、保存していこう、ということは、どこかでメッセージ的には伝えてもいいのかも知れない。ただ、あまり中途半端に手を出すと識者の方たちに怒られそうだから(笑)、どうしようかな、とは思ってます」


■なるほど。

「パッと見でおしゃれよね、とか素敵よね、とか。アート的な意味合いでの残し方というか。『なにかは分からないけど素敵』とか、そういう感じでもいいのかな、と思っていて。あまり蘊蓄を垂れてどうこうしようというよりは、まずは感じていただきたいというか」


■ただ、今回お話を聞いていて本当に面白いなと思ったのは、“エシカル”や“サスティナブル”は大切だし重要だってこと分かったうえで、「ただ私はファッションが好きなんです」という軸がブレていないところなんですね。今更、声を大にして“エシカル”、“サスティナブル”と言わなくても、当然の前提としたうえで「私は、私」とおっしゃってて。

「今、言ってたようなことって……。例えば、着物って長い文化があるから、いろんなルールがあるんですよね。年齢であったり、季節だったり、生地と生地の合わせとか、柄と柄の合わせ方とか。私はそれも度外視したいと思ってるんですよ、正直(笑)。今、私が好んでいるのは“柄やデザイン”であって、“着物のルール”ではないんです。ルールはどうでもいい。現代において、素敵な布地を好きなように着たらいい、見つけたらいい、って思ってるから。

“文化を継承する”という部分でも、厳密なルールまで継承しようとしても、無理じゃないかと思うんですね。なぜなら、そのルールは今の時代には合わないから。今の時代に合わせて廃れないようにする、より時代に合った形でいいところを活かせばいいじゃないか、と。

だから、着物を伝統文化として、日本文化として未来に繋げていきましょうっていう気は全くない。それは他にやっている方たちがたくさんいらっしゃるし。私はそういう堅苦しさが苦手だし。『そういう事を言ってるから、ルールが多すぎるから、未来に継承できないんじゃない?』って。そうじゃないところ、ルールがなくてもいいところを存続させていく、ってという部分にフォーカスしたいんですね。だから私は布地の勉強とか、柄の勉強とか一切していないんですよ。基本的には。自由にデザインとして、素敵に見えるもの、格好よく見えるものを追求する。そこに着物のルールは持ち込まない、ということです」


UZ Fabricの個性はやっぱりテキスタイルそのもの
柄選びとその組み合わせによって、モダンさを生み出したい


■新しいアイテムとしてはポーチやバッグといった、ベーシックなアイテムも発表されていますね。ベーシックなフォルムのアイテムを作ることは、むしろ、ブランドイメージの担保が難しいようにも思うのですが。

「やっぱりそこは、柄の選びと組み合わせだと思う。作業としても、何よりそこに時間をかけるし。とにかく一番重要なのが、仕入れ。そこでどれだけ“運命の出会い”が出来るかどうか。それと、柄合わせ。いわゆる着物の常識、和のルール的なものは一切無視してるんですね。本当に感覚的に、見たときに面白いと感じることが出来る柄合わせをしてる。そこにブランドとしてのオリジナル性が生まれてるんじゃないかな」


■逆に、仕入れの時に絶対に選ばないもの、というものはあるんですか?

「“小梅ちゃん”(笑)。いわゆる、お花柄というか、古典的な和の柄――松、紅葉、梅、といったものはほとんど選ばない。選んだとしても、小さなパーツにしてからじゃないと使わない。だから、選ぶのは出来るだけモダンで、幾何学的に見えるもの。もしくは、ものすごく大柄な派手なものか、っていうものしか選んでいないと思う」


■たしかに〈Uz Fabric〉のアイテムには、パターンであったり、リズム感を感じるものが多いかもしれませんね。

「ワンピースは柄が命だからドーンと目を引くものを選ぶけど、でもそこも、いわゆる一般的にお茶会に着ていくものや、冠婚葬祭であったり季節がはっきりとわかるようなものというのは使わないんです。一般的にみて“和柄”に見えるものは選ばない」


■なるほど。つまり、今、一般的に“和柄”と言われるものの定義がとても狭い、ということでもあるわけですよね。

「そうだと思う。もっと本当はたくさんあるんですよ。和柄に見えないけど、日本で生まれた柄っていう。それが今はすごくステレオタイプ的になっているというか。いかにも海外の人が好きそうな柄が和柄、みたいな感覚というか。でもそれってほんの一部で。びっくりするくらい色々なテキスタイルのデザインがあるんですよ」


洗練されたデザインと、表現としてのアートそのコラボレーションを実現していきたい


■現在、オープンにできる範囲で構いませんので、今後のUZ Fabricの目指す試みや展望があれば、お教えいただけますか?

「アート的な活動は積極的にやっていきたい。ただモノを作っているブランドというより、アーティストさんとコラボレーションしたり。私自身がそういうものが好きなだけなんですけど。

UZ Fabricのロゴも海外のアート展やエキシビションからヒントを得ていたりとかするし。ブランド全体の雰囲気としてはちょっとヨーロッパ的な感じ、アートな感じを醸したいと、ずっと思ってやっていますし。だから、今はまだプロダクトとしては“普通”な部分もあるかもしれないけど、アートに関わる色々な方たち、クリエイターの皆さんと一緒に何かやっていければ、というのは将来の展望としてあります」


■もう少し詳しく訊かせてください。例えば、先ほど、小寺沢さんの「かっこいい」の定義についてお伺いした際、“洗練されたもの” “整っているもの”というキーワードが出てきたと思います。ここで興味深いのは、アートというのは美しいものであると同時に、粗いもの、洗練しきっていないものですよね。洗練されたデザインと、アートって実は真逆な意味もあるというか。

「それは簡単に言うと、自分が出来ないからですよ。憧れているから。“表現”というものに対して憧れがあるんですよね。特に私は現代アートと呼ばれるものが好きなんですが、作家さんやアーティストに詳しいわけでもないんです。海外の大きな展覧会なんかに行ったとしても、全く知らない人であっても、好きか嫌いかだけで見るし、それを見ながら『何かこんなことを表現しているのね』ってことを分からないなりに感じ取っていくのが好きなんですよね。で、憧れるわけですよ。だから、アーティストの方たちとのコラボにしても、何かそういうことの近くにいたい。ルールに縛られることのない、自由な発展をしていきたいですよね」

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