Vol.3
それぞれのキモノとの出会いは一期一会。
今、この瞬間にキャッチしておかないと、もう二度と出会えない。その感覚の方が、エシカルやサスティナブルといったことよりも先にある
■2021年現在、エシカルなもの作りというのは、とても注目されていますよね。社会的にもトレンドなキーワードと言えます。社会的貢献、倫理的なモノづくりというのは、《UZ Fabric》のコンセプトとまさに重なるわけですが、それは最初から意識されていたんでしょうか?
「それは、全然なくって。後からそうなっただけ、というか。シンプルに『着物を捨てるのは勿体ない』という――。何ていうのかな、昔に作られたものは、もう今は作れないわけですよね。だから着物との出会いというのは一期一会なものなんです。それを今、この瞬間にキャッチしておかないと。別の形、次の形に変えてもいいし、そのまま着てもいいし、どんな形でも構わないんだけど、今、救い上げておかないと次の出会いはないんですよ。だから、それを身に着けたいとか、持っておきたいと感じたのであれば、形を変えた方がいいのかな、というくらいの感覚であって。なので、ブランドを立ち上げてみたら結果、エシカルであるとか、そういった世の中的な時流に乗っていた、というだけの話。
ブランドのコンセプトを決める時も、例えばサスティナブル的な『環境が~』とか『廃棄の~』みたいな問題を言った方が今っぽいし、トレンドだよね、と思うことはあったんですけど、あまりそういう社会貢献的な側面は強くしたくなくて。あくまでもブランドとしてやっていることが、結果、そういったところに繋がっているだけであって。そもそもブランドのモチベーションとしては、素敵な着物の古き良き魅力を使い繋ぐことなので。ちゃんと自分が身に着けたいと思うものを作ることだし、ちゃんとおしゃれで、かっこいいものに生まれ変わらせたい――それが一番重要」
■小寺沢さんが一番最初に、魅力を感じた着物、或いはデザイン/素材とはどんなものだったんでしょうか。どんな部分に具体的にときめいたのか、教えていただけますか。
「サイトのトップページに載っている生地。UZ Fabricのロゴがあって、その下にいる黄色と黒の生地。私はこれはもう、天才とだと思ってるんです。天才生地って呼んで大事に保管してる。実はこれって襦袢なんですよ。襦袢の袖の部分」
■つまり下着の部分ですね。
「そう、上に着ている着物の袖のところからチラリと見える部分のデザインなんです。本来は“見えない”もの。なのに、この色の合わせ、柄の合わせが衝撃的にかっこいいと思って。この子との出会いが本当に衝撃的で、『なんて粋でかっこいいやつなんだ!』みたいな。しかもこれを下着でやってるっていう。見えないところでやっている、という心意気もすごいと思った」