vol.1
何より魅せられたのはテキスタイルとしての美しさだからカタチは何でもいいんです
古い時代のキモノとの出会いで初めて気づいた現代にはないモダンなデザインの魅力
■まず、小寺沢さんとキモノとの出会いはいつ頃、どんなきかっけがあったんでしょう?
小寺沢「そもそもは〈キモサト〉です。私自身、普段から着物を着る人ではなかったんですね。実際、成人式以来、着物なんて兄弟の結婚式くらいしか着ていなくて。
〈キモサト〉の主催者が〈竹の輪〉っていうイベントをやっていたんですね。“和に遊ぶ”というコンセプトで。歌舞伎をみんなで観に行ったり、落語を聞きに行ったりとか。夏だったら『歌舞伎を観に行くなら浴衣を着て行こうか』とか、そういう感じで。
そこから着物を買いに行くようになったり、着付けを教えてもらうようになったり。それが和の文化と触れ合うようになった最初のきっかけ。で、その主催者が“着物の里親探し”を始めるということになって。」
■それが〈キモサト〉ですね。
「会社(UZ株式会社)として竹ノ輪をサポートしていたので、『いい活動だね』っていう話になって。〈キモサト〉をお手伝いすることで、本格的に着物に触れることになったんです。
〈キモサト〉には本当に色々な古い着物が並んでるわけですけど、どれもデザインがすごく素敵で。それまで私自身、それほど多くの着物を見たことがなかったし、見たとしても呉服売り場にある新品のものばかりだったから、古い時代の着物の良さに驚いて。時代によってトレンドが全然違うんですよ。すごくモダンな柄、素敵な柄がたくさんある。それを初めて知ったんですね。
現代だと、着物を着るシーンって、おそらくお茶会だとか、結婚式とか、日常から少し離れたシチュエーションだと思うんですね。でも、こんなに素敵なんだ、モダンなんだっていう事を知ったときに、自分でも着たいな、と思って。私はジャニーズが大好きなので(笑)、着物着て〈滝沢歌舞伎〉観に行きたいな、とか」
■(笑)
「実際に〈キモサト〉で着物を買って、着て、みたいなことをやってみたんだけど……もう、これが面倒臭い(笑)。自分で着れないから、家まで着付け師さんに出張してもらって、着付けてもらって出掛けるしかない。
着慣れている人は『そんなの着るようになればわかるよ』とか『難しくないよ』って言うんだけど、日常的に着物を着るわけではないから。着付けを習いに行こう、というほどのモチベーションもないし。たまにしか着ないんだから、だったらお金を払って着付けしてもらおう、みたいな」
■確かに、着付けはハードルの高い問題ですね。
「素敵な着物がたくさんあるわけで、それを着てみたいとは思うんだけど、そのハードルをどうしても超えられなくて。
そして、〈キモサト〉では(着物の)里親さん探しを一生懸命しているわけだけど、どうしても余ってしまうものがある。里親が見つからない着物が出てくるんですね。サイズの問題であったり、シミや汚れの問題であったり。捨てられてしまう着物がある。でも、それってなんか勿体ないな、というのが《UZ Fabric》の原点かな。
シミや汚れがあるなら切っちゃえばいいじゃん、っていうか(笑)。サイズ小さいなら形を変えてしまえばいい、そういうところから始まったんですね。私自身は着物の織りや染めに興味があるわけではなく、テキスタイルとしての面白さや美しさに興味を持っていたので。だから、形は何でも良かった。その布地のデザイン、美しさが捨てられてしまうのは勿体ないな、と思ったので」
■だからこそ、ブランド名に“ファブリック”とあるんですね。
「そうそう。布のデザイン、柄。布地そのもの、というか。それがどんな形に変わっていくのかは、何でも良かったんですよね。別に服じゃなくてもよかった。着物を使って新しくリメイクしていく、生まれ変わらせてあげることが第一。捨てられてしまうのは勿体ない、違う形であっても残したい。残していけるのであれば、どんな形でもいいんです」
■服でなくても構わない、というのはちょっと意外でした。現在のUZ Fabricの代表作であるワンピースや羽織を見ると、そのデザインの完成度の高さから、てっきりファッション・ブランドとしてスタートしたものだと思っていたので。
「それは着物を何に形を変えるか、と考えていく中で生まれただけというか。とは言え、着物ってもともと着るものなので、『着付けは出来ないけど、身につけられるものって何かな』っていう発想の中から、ワンピースが最初に出てきたアイデアですね」